大学院生の河田君が筆頭著者の総説がFrontiers in Oncologyに掲載されました。

2025.06.17  最近の研究活動

小児脳腫瘍とエピゲノム:がんの「設計図の読み方」の異常に迫る

小児脳腫瘍は、子どもの命に最も関わるがんの一つです。その多くは、脳の発達過程にある神経幹細胞や前駆細胞から生じると考えられています。

こうした脳の発達の過程では、本来であれば神経細胞が正しく分化し、それぞれの役割を担うように「設計図(ゲノム)」が読み込まれます。しかし、小児脳腫瘍では、この設計図の読み方そのもの――つまり「エピゲノム」の仕組みに異常が起きることで、細胞ががん化することが明らかになってきました。

成人のがんとは異なり、小児の脳腫瘍では遺伝子の変異が少ないことが多く、がん化に関わるエピゲノム異常がより重要な役割を果たしていると考えられています。具体的には、クロマチン構造を変える酵素(Chromatin remodeller)、ヒストン修飾酵素、DNAメチル化酵素、さらにはゲノムの大きな構造異常などが関与しています。

さらに、腫瘍の種類によって関与するエピゲノム因子は異なっており、それぞれの発生起源の違いが、腫瘍の性質や治療反応に大きく影響しています。

私たちのレビュー論文では、これらの知見をもとに、小児脳腫瘍がどのようにしてエピゲノム異常によって発生するのかを整理し、どのようなエピゲノム因子が治療の標的になりうるかについて最新の研究をまとめています。

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