大学院生の肖君が参画した稲垣先生(NAIST)との共同研究がAdvanced Science (IF:14.1)に掲載されました

2025.08.14  最近の研究活動

肖君は脳オルガノイドを用いてヒト膠芽腫細胞の細胞移動にSHTN1が寄与していることを証明しました。

脳オルガノイドの樹立はNCNP青木吉嗣部長の協力で行いました(Xiao et al. in preparation)。

 

大学院生の河田君が筆頭著者の総説がFrontiers in Oncologyに掲載されました。

2025.06.17  最近の研究活動

小児脳腫瘍とエピゲノム:がんの「設計図の読み方」の異常に迫る

小児脳腫瘍は、子どもの命に最も関わるがんの一つです。その多くは、脳の発達過程にある神経幹細胞や前駆細胞から生じると考えられています。

こうした脳の発達の過程では、本来であれば神経細胞が正しく分化し、それぞれの役割を担うように「設計図(ゲノム)」が読み込まれます。しかし、小児脳腫瘍では、この設計図の読み方そのもの――つまり「エピゲノム」の仕組みに異常が起きることで、細胞ががん化することが明らかになってきました。

成人のがんとは異なり、小児の脳腫瘍では遺伝子の変異が少ないことが多く、がん化に関わるエピゲノム異常がより重要な役割を果たしていると考えられています。具体的には、クロマチン構造を変える酵素(Chromatin remodeller)、ヒストン修飾酵素、DNAメチル化酵素、さらにはゲノムの大きな構造異常などが関与しています。

さらに、腫瘍の種類によって関与するエピゲノム因子は異なっており、それぞれの発生起源の違いが、腫瘍の性質や治療反応に大きく影響しています。

私たちのレビュー論文では、これらの知見をもとに、小児脳腫瘍がどのようにしてエピゲノム異常によって発生するのかを整理し、どのようなエピゲノム因子が治療の標的になりうるかについて最新の研究をまとめています。

論文はこちら

川内教授と大学院生の王君が参画したフランスキュリー研究所との国際共同研究がNature Communicationsに掲載されました。

2025.06.03  最近の研究活動

フランス・キュリー研究所との国際共同研究により、脳腫瘍の進展に関わる新たな分子メカニズムを明らかにしました。

本研究では、小児脳腫瘍モデルを用いた解析により、腫瘍細胞がネトリン1(Netrin-1)と呼ばれるタンパク質を分泌することが明らかとなりました。このネトリン1は、正常脳では軸索誘因物質として機能することが知られていましたが、腫瘍の進展を促進する重要な因子であることが示されました。

さらに、ネトリン1に対する中和抗体を用いた治療実験を行った結果、腫瘍の増殖が有意に抑制されることが確認され、ネトリン1が有望な治療標的である可能性が示唆されました。論文はこちら

本成果は、従来の治療法が効きにくい難治性脳腫瘍に対し、新たな分子標的治療の開発につながることが期待されます。実は川内教授は大阪大学村上富士夫教授門下生で、学生時代にネトリン1の研究を周りがしていたので非常に馴染みがある分子でした。まさか脳腫瘍の分野に移ってから、またこの分子と繋がるとは予想外です。

大学院生の王君が筆頭著者の研究がCell Reportsに発表されました。

2025.05.20  最近の研究活動

がんは、遺伝子に傷がつくことで始まると考えられていますが、最近の研究では、それだけでは不十分であることがわかってきました。

遺伝子の変化が「スイッチ」となり、他の遺伝子の働きを調節している染色体の構造(=エピゲノム)にまで影響を与えます。

この構造の変化が、もともと正常だった神経細胞の性質を変えてしまい、「がん化」へと導くのです。

つまり、がんは“遺伝子の傷”だけでなく、“遺伝子の使われ方”の異常も大きく関わっているのです。

私たちは今回、がんにおける遺伝子変異がエピゲノム制御機構に直接影響を与え、その結果として腫瘍形成が促進されるという新たな分子メカニズムを明らかにしました。

この発見は、遺伝子変異の影響が単なる発現変化にとどまらず、細胞内のクロマチン構造や転写制御全体に波及することを示しており、腫瘍の起源や進展過程を理解する上で重要な知見です。

本研究により、エピゲノムの異常ががんの発症において果たす本質的な役割が改めて浮き彫りとなり、新たな治療標的の可能性が広がります。

プレスリリースはこちら

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名古屋市立大学 医学研究科
Deutsches Krebsforschungszentrum