研究概要
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脳腫瘍が生じる機序の解明と新しい治療戦略の探索(教授・川内大輔)
私たちの研究グループは、脳腫瘍を材料に脳形成の分子機構を解明することを目指しています。脳細胞の分裂や分化は遺伝子プログラムによって厳密に制御されていますが、このプログラムの破綻は脳細胞の異常増殖や脳内環境の変性を引き起こし、脳腫瘍という重篤な疾患をもたらします。したがって、「脳腫瘍が生じる機序の解明」と「正常な脳形成機構の理解」は密接に関連しており、表裏一体の研究分野です。
特に私たちは、小児脳腫瘍の解明に重点を置き、神経発生の基礎研究にとどまらず、医学分野への貢献を目指しています。この研究の意義は極めて高く、患者の治療法開発にも直結する可能性があります。
脳腫瘍の発生メカニズムを知るための鍵は、そのゲノムにあります。近年のゲノム解読技術の進歩により、がん特異的な遺伝子変異が次々と発見され、脳腫瘍も例外ではありません。これらの遺伝子変異がどのように発がん性を持つのか、その具体的な機能はまだ解明されていない部分が多く残されています。
私たちの研究は、ヒトで発見された遺伝子変異が脳の正常細胞をどのようにがん化させるのか、またその際にどのようなシグナルが腫瘍形成を導くのかを多角的に解明することに焦点を当てています。マウス遺伝学、分子生物学、生化学などの様々な研究手法に加え、最近では神経科学の新技術を駆使し、脳腫瘍の発生メカニズムに迫っています。また、私たちが発見した発がん機序が治療に応用できるかどうかを検証するため、腫瘍マウスモデルを用いた薬理実験にも精力的に取り組んでいます。
私自身、ドイツがん研究センター(2013-2019)と国立精神・神経医療研究センター(2019-2024)で研究チームを率いてきましたが、2024年4月より名古屋市立大学大学院医学研究科で新たに研究室を立ち上げました。日本国内では脳腫瘍研究の人口がまだ少ないですが、国内外の多くの研究室と共同研究を行い、最新の研究情報を共有しながら国際的な視点で研究を進めています。
日本国内の研究環境の利点を最大限に活かし、大学院生やポスドクなどの若い研究者と共に、スタッフと協力して脳腫瘍研究の最前線で挑戦を続けていきます。研究内容に興味のある方は、メールや電話でお気軽にご連絡ください。将来的に脳腫瘍研究で海外留学を考えている若い研究者の相談にも積極的に応じたいと考えています。
一緒に脳腫瘍研究の未来を切り拓いていきましょう。
アルツハイマー病の予防・治療法解明 (准教授・鄒鶤)
超高齢社会に突入した日本では、認知症患者数は増加の一途をたどり、特に認知症の60%前後を占めるとされるアルツハイマー病の予防・治療法の確立は、急務となっている。我々のチームでは、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患の病態解明を行い、分子メカニズムに介入する形で予防・治療法解明のための研究を行っている。